電源装置のリモート・センシングとは

電源の出力端子において出力電圧安定度が良好でも、負荷までの距離が長くなると、負荷の変動により出力ラインに電圧降下が生じ、負荷端での電圧安定度が悪化します。この現象を防止する為、出力電圧検出点を任意に移動できるようにしておき、実際の負荷端で出力電圧を検出するようにして、電源と負荷をつないだリード線(配線)の線間電圧降下を補償します。
リモートセンシング

電源(安定化電源)の良し悪しの指標の一つにラインレギュレーション(Line Regulation:商用電源側からの入力電圧の変動に対する出力安定度で、電源変動率、入力電圧変動率とも表記する)やロードレギュレーション(Load Regulation:出力に接続した負荷の変動に対する出力の安定度で、負荷変動率、出力電圧変動率、出力電流変動率とも表記する)などありますが、せっかく高安定の電源装置を選びながら、その機能を台無しにしている場合があります。そのひとつがこの機能で、電源装置から出力された高安定の電力を出来るだけ良い状態で負荷装置まで伝える機能です。高砂製作所の殆どの電源装置に標準装備(一部の交流電源、小型の直流電源には装備されていない場合もあります。)されおり、背面などの出力端子やその近くなどでショートバーやジャンパー線などで+S,-Sなど刻印されている端子です。出力配線以外にもセンシングの配線が別途必要な為、工場出荷時は封印された状態で出荷されます。そのまま封印された状態で使っているのでしたら大変もったいない機能です。

この機能は、電源装置と負荷をつなぐ線材の電圧降下を補償する機能で、負荷装置までの電圧降下は、使用する主線(リード線、導線、電線、線材とも)に依存します。

通常、電源装置は、リモートセンシングしない(工場出荷時状態)場合は、出力端子の近くでセンシングしていますので出力端子上では、負荷電流変動による出力電圧の変動ごくわずかです。多少の過渡応答はあるものの見た目の電源内部抵抗は、できるだけ理想電源に近くなるように動作する為、見かけ上、実質0Ωになるようにう動作します。しかし折角高安定化した電源でも、電源装置の出力端子から負荷までの主線の抵抗が大きいと負荷側で見たときにあまり安定化されない劣悪な状態となります。

例えば、電源端子から負荷まで2mで1.25sq (=1.25mm2)の電線で接続した場合に、最大10Aの電流が流れる負荷の場合、導体の導体抵抗は、一般的な銅線の場合、1メートル1sq (=1.25mm2)あたり約17mΩ/mぐらいなので、+側も-側も同じ長さであれば、17mΩ×2m×2で、往復68mΩとなります。これに10A流れると、電圧降下=電流×抵抗率×ケーブル長さ で640mV分負荷端で電圧が低下します。デジタル回路なら動作不安定の元に、DC/DC,DC/ACコンバータなら供給電力不足により2次側の供給不備、ノイズ値上昇などが発生する場合も、モータ制御ならトルク不足になりかねない事態となります。

リモートセンシング機能を内蔵した電源装置なら、 センシングケーブルを負荷側に(センシングポイントを負荷端に)接続すれば、自動でこの電圧降下した電圧分を設定した電圧に足して出力します。
リモートセンシングを使わない場合
ローカルセンス
リモートセンシングを利用した場合
リモートセンシング使用時
リモートセンシング接続例 (ZX-Sシリーズの場合)
出力端子から負荷までの配線による電圧降下が問題となる場合、リモートセンシング機能により、 配線の電圧降下を補償することができます。補償できる電圧は片道あたり1Vまでです。 下図のように配線してください。ZX-Sのセンシングラインの断線による、出力電圧の上昇は10mV以内のため、ローカルセンシング用のローカルセンス・リード(+出力と+S端子及び-出力と-S端子を短絡するショートバー、リード線)やリモートセンシング有効/無効設定のようなものはありませんので気軽に使えるようになっています。
ZXの場合のリモートセンシング接続方法
MEMO
配線は、より合せることで負荷端でのリップル、ノイズ を小さくすることができます。
C1、C2を負荷端の近くに接続することで、ノイズレベ ルを規格値よりも小さくすることができます。
C1,C2は高周波インピーダンスの小さなものを使い、リード線は極力短く切って接続します。

C1 :
電解コンデンサ100~1000μF
(低インピーダンス品)
C2 :
フィルムコンデンサ 1~10μF


【危険】
●出力端子に結線するときは、必ずPOWERスイッチを「OFF」にしてから行ってください。
【注意】
●リモートセンシングをおこなった状態で出力ライン・センシングラインをスイッチやコネクターなどで開閉しないでください。 故障の原因となります。 ● OVP回路は出力端子の電圧を検出していますので、OVPの設定電圧は保護動作させたい電圧に出力配線(往復)の電圧下降分を加えた電圧値としてください。

高砂製作所の代表的な電源のリモートセンシング
適用機種 出力 リモートセンシング 備考
電源種別 直流 交流 補償 センシング断線 切替・設定方式
ZX-S ズーム方式直流電源 × 片側1Vまで 10mV以内の出力上昇 自動認識 M3ビス
HX-S-G 大容量スイッチング方式
直流電源
× 片側1Vまで 10mV以内の出力上昇 自動認識 M3ビス
KX-S ズーム方式直流電源 × 片側1Vまで 0.5V以内の出力上昇 ローカルセンス・リード
  架け替え
M4ビス (KX-210Lのみ AWG18-26)
HX 大容量スイッチング方式
直流電源
× 片側1Vまで 1.2V以内の出力上昇 ローカルセンス・リード
  架け替え
センシング線AWG28~16
GP シリーズレギュレーション
(ドロッパー)方式
直流電源
× 2Vまで <オープン不可> ローカルセンス・リード
  架け替え
ビス
LX-2
(Bタイプのみ)
スイッチング方式
直流電源
× 片側1Vまで <オープン不可> DIP-SWによる切替 D-SUB15
AWG22-28
AA/XⅡ アナライジング交流電源
<デジタルAVR>
補償:設定電圧の5%以内
断線時、最大で設定電圧の+6%
画面メニュー又は
LAN等からの遠隔制御
による設定で切替
センシング線
0.2~1.5mm2
RZ-X2 電力回生型
ハイブリッド(双方向直流/充放電)電源
× 片道5Vまで 10mV以内の出力上昇 自動認識 センシング線
AWG28~16
RZ-X 電力回生型
双方向直流電源
× 片道5Vまで 10mV以内の出力上昇 自動認識 センシング線
AWG28~16
RZ-X-100K 電力回生型
双方向直流電源
× 片道5Vまで 10mV以内の出力上昇 自動認識 センシング線
AWG28~16

※ 動作中にセンシング線が断線した場合、出力に一時的に過大な電圧がかかる場合がありますのでご注意ねがいます。出力ライン・センシングラインにスイッチやコネクターを接続し開閉する場合は、必ず電源をOFFにした状態で行ってください。改良に伴い、製品の仕様、外観形状などおことわりなしに変更することがあります。

 
 
線材のおおよその導体抵抗値と推奨する最大電流
▼JIS規格に基づく断面積表記 単位mm2又はSQ (=Square:スケ ) 抜粋表
断面積 導体抵抗(20℃) 推奨最大電流
0.5mm2 (0.5sq) 約 37mΩ/m  
0.75mm2 (0.75sq) 約 24mΩ/m  
1.25mm2 (1.25sq) 約 17mΩ/m 7A
2mm2   (2sq) 約 9.6mΩ/m 10A
3.5mm2 (3.5sq) 約 5.4mΩ/m 16A
5.5mm2 (5.5sq) 約 3.5mΩ/m 22A
 
断面積 導体抵抗(20℃) 推奨最大電流
8mm2 (8sq) 約 2.4mΩ/m 30A
14mm2 (14sq) 約 1.4mΩ/m 44A
22mm2 (22sq) 約 0.85mΩ/m 65A
38mm2 (38sq) 約 0.5mΩ/m 100
60mm2 (60sq) 約 0.3mΩ/m 150
100mm2 (100sq) 約 0.2mΩ/m 220
▼米国A.W.G規格(アメリカンワイヤーゲージ) 抜粋表
A.W.G 断面積 導体抵抗(20℃) 推奨最大電流
AWG22 0.3256 約 63mΩ/m  
AWG20 0.5174 約 40mΩ/m  
AWG18 0.8226 約 23mΩ/m  
AWG16 1.309 約 14mΩ/m 7A
AWG14 2.081 約 9.0mΩ/m 10A
AWG12 3.309 約 5.7mΩ/m 15A
AWG10 5.262 約 3.6mΩ/m 22A
 
A.W.G 断面積 導体抵抗(20℃) 推奨最大電流
AWG8 8.368 約 2.2mΩ/m 32A
AWG6 13.30 約 1.4mΩ/m 44A
AWG4 21.15 約 0.9mΩ/m 64A
AWG2 33.63 約 0.56mΩ/m 90A
AWG1 42.41 約 0.46mΩ/m 110A
AWG2/0 67.42 約 0.28mΩ/m 150A
AWG4/0 107.2 約 0.17mΩ/m 230A
 
導体抵抗は、軟銅線などの一般的な線材等で、直流で使用した場合におけるおおよその目安です。撚り、メッキ、線心数などの電線構成により異なります。詳しくはケーブルメーカの仕様をご確認ください。推奨最大電流は、当社の推奨値でケーブルの最大許容電流値を意味するものではありません。最大許容電流に近い値で使用しますと、電圧降下が著しいばかりか、電線の発熱による温度上昇で抵抗値の微妙な変化などがあり、電源の安定供給の妨げになりますので、ゆとりを持った電線を選択ねがいます。詳細な許容電流については使用するケーブルの種類、使用温度等で異なります、ケーブルメーカーの仕様をご確認ください。
電源の出力端子から負荷までの主線は、下記グラフを推奨します。リモートセンシング線は、電流が殆ど流れないので比較的細い線を利用する事が出来ますが、機種により背面端子使用により適合線材のサイズを指定しているものもあります。
【負荷電流 対 推奨導体面積 (銅線)】
負荷電流対推奨導体面積


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